作者後書きらしきもの
ラインの黄金をお届けします。
(注 この絵本を手にとった方で全曲盤を聞いたことがない方を想定して書いてあります。
全曲盤を聞き通せる方はこの本は雑音に近いかもしれません。)
多分この本を読んで思った第一印象は何て読み辛いマンガだと思っているに違いありません。
ドイツ語のテキストは要らないだの、もう少し話を端折れとか、漫画的言い回しにしろとか、etc.・・・・
解っていますが、敢えてこの形にしたのはCDと一緒に聞きながら見て欲しいと希望するからです。ホンとはライトモチーフの楽譜もついたヴァージョンも在って
(川島通雅氏の分析に拠るものです。ご本人の許可は97年当時とりつけたのですが
時間も過ぎているので没に・・・)
今回、それは見送る事にしました。
漫画的かつストーリィをご希望でしたら他の諸先生の作品をどうぞ。
この作品は大人の絵本という解釈で考えていただけたらと思います。
殆ど一般の人はマズ全曲盤を観たり聞いたりした事が無いでしょう。
延べ15時間に及ぶ嘗て無い空前絶後の大作ですから。
ワルキューレの騎行とかジークフリート葬送曲とか黄昏とか名称ばっかりが先行しています。
それらの母体である「ニーベルングの指環」はこんなにも美味しい作品なのです。
妖精、神々、巨人、侏儒が愛と力を廻って鬩ぎ合い陰謀策略裏切り、近親相姦、親殺し、
それらが絡み合って流転してゆく。
執着に拠る破壊、世界崩壊。
足掻いて足掻いた先に最期に辿り着く在りのまま受け入れなければならない諦念。
そして忘れてはならないのはそれを支える厚い篤い熱い暑い音の海。
厚い!先ず文字通り超分厚い音の海です。
音符がインフレ起してます。
篤い!ある人々にとっては篤いものです。
(毎年夏に開かれる平均4時間のミサを聴きに世界各国からあつまるくらいですもの)
熱い!この大先生の曲を暫く聴いていると体の奥底が熱くなってきます。
暑い!この大先生の曲に宇宙を感じられない人にとっては暑苦しく、
音の中性脂肪タップリ、コレステロール値増大です。
この海で溺れた人間は数知れず。
筆頭はかのバイエルン王ルートヴィヒ二世だろうなぁ。
(狂王と云われ彼のメルヘン嗜好で造ったノイ・シュヴァンシュタイン城を筆頭にした三つの城は国政を傾けさせたが今では貴重な観光資源。かの人が居なければワーグナーだって世に現れはしなかった)
絵師ではビアズレーか・・・・
(代表作として「アーサー王の死」「サロメ」のイラスト群)
ラッカムと挙げる人が居るかもしれないが止むに止まれぬ情熱に取り付かれタンホイザーの第一幕を観て未完のポルノ小説を書き上げ、コメディ・ラインゴールドの挿絵を作成中に若くして死去してしまったビアズレー(25歳と7ヶ月!)に軍配が上がるでしょう。
この音の浜辺でチャプチャプしている程度や、遙遠くでココにこんな海が在ったんだと言いつつ眺めている人々にとってはかの大先生の大作でさえも、今ひとつ取っ掛かりがないとお経に聞こえるそうな・・・・
例えばDVDやビデオで観たとします。
ハリウッド張りの派手さは無いに等しいので退屈で眠りを誘うらしい。
回想シーンなんかは映像が無い分だけキッチリ、イマジネーションを働かせない限り退屈だもの。
最初は。
(ライトモチーフを追える様になると違ってくるのだが・・・・)
その点を踏まえてライトモチーフに合せ絵的ライトモチーフを用意してあったりト書きとは違う演出をしたり補足的バック・ストーリィを漂わせたり其れなりに加味してあります。
しかし原文以上の言葉や取りまわしは付け加えていません。
(悪意的恣意的解釈はしていますが。)
表現の自由を守るため18禁です。念のため。
「ラインの黄金」は約二時間です。
この機会にワーグナーの音(全曲盤)に触れ、
ワーグナーの音の海に溺れる苦しさ、
泳ぎきった喜びを知ってくだされば幸いです。
(楽しさと書きたかったが苦しさの方がぴんとくるのよ、
ホンとに。
かの大先生の音楽は。
でもその海で泳げる様になると陸に帰ってこられなくなります。
ニーチェとかは帰ってきた口ですが・・・・・)